北陸鉄道・金名線

金沢の町外れ「野町」という駅から北陸鉄道のレールは始まっている。16KMほど行った「加賀一宮」でレールはちょんぎれているが、そこから先の部分がこの写真に収められた「金名線」だ。 「金名線」の「金」は金沢、「名」は…名古屋の「名」だ。けれど名古屋までとうてい届かない 「白山下」という辺鄙な場所でレールは終わってしまった。こういうことはローカル線にはよくあった。

ぼくが訪れたのは、不幸にも最後の電車が走った一ヶ月前、それも廃止のセレモニーもなかった、理由は橋脚の岩盤崩壊の危険性が確認されたため、休止状態のまま、3年の後に廃線となってしまったからだ。8時の電車が過ぎると、15時まで電車を待たなければならない。数枚の写真を撮るために20KMをひたすら線路にそって歩いた。時刻表の時間をグラフにして、撮影のポイントをめざしてせっせと山中を歩いた。もうやろうとおもってもやれない、と思う。

古びた電車、地味な田舎のたたずまい、ぼんやりとした秋の光、僕の心惹かれたものすべてがあった。どんなにもがいても、電車が走るのを肉眼で見ることはもうできないのだ。
撮影:1983.4.5/1984.11.25

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