伊勢屋

ついに、辿り着いたのである。
高速神戸駅から、歩くこと20分、
神戸の山沿いの住宅地に、その激しい佇まいはあった。

多くは語らないでいいのである。
ネット上には、いくらでも事情通はいてくれる。

ただただ、阪神大震災を乗り越えて、その店は肩肘張らずに、そこにある。

1月の風のある寒い午後、痺れるような体を落ち着けて、
それでも感覚は麻痺しているのか、
ビールを注文してみる。

噂のワンタンメン500円を注文するのである。
中華そばはこれ以下の価格らしい。

近所のおっちゃん、おばちゃんらしき客が
ラヂオから競馬予想の真っ只中。

ところがこの店、オカモチぎょうさんあるけど、
おっちゃんは一人。
誰が店番するんやろ。

化石のような
小さな店である。

レトロとか、昭和とかいうのを
存分に駆逐するくらい、

それを上回る印象だ

自然に還る準備は、
誰にどうこう言われなくても、もう万端である。

これが、店の入り口
右の垂れ下がった物体は
いわゆるのれんである。

店は、隙間風、というより
すきまそのものから、ひんやりした空気が押し寄せてくる。

松本隆先生もお住いの
風街やしな。

ツワモノ揃いのこの町で、
ここにまたくるときはあるのかなあ。

この佇まいを見届けて
達成感は感じるのだった。


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